戸建住宅なら土地価格と建物価格の合計から販売価格が設定され、相続税評価額との間に大きな差は生じません。しかし、マンションの価格は、土地価格にリンクさせずに設定されるため、これらの間に大差が生じるときがあります。今回はここに注目して、マンション物件をみてみましょう。
販売価格と評価額の関係
マンションの販売価格は、土地価格と建物価格で決まるのではなく、近隣の専有面積あたりの単価を相場として価格設定されます。そして、通常、同じマンション内の同じ面積の部屋でも、下層階より上層階の方が、北向きより南向きの方が販売価格は高くなります。
ところが、相続税評価額や固定資産税評価額は、敷地に面する道路の路線価より算出し、全体の敷地面積から各専有面積により按分されるため、同じ面積の部屋であればどの部屋も評価額は同じです。
大規模タワーマンションの場合
実際の販売価格と評価額との差は、容積率割増を受けて、1戸あたりの土地持分が少なくなる大規模タワーマンションに顕著に表われます。
次の事例を見てみましょう。
25階建てマンションの10階、
南向きの部屋を6千万円で購入
相続税評価額は2千4百万円
贈与税の配偶者控除の適用
婚姻期間20年以上の配偶者には、自宅購入のための資金2千万円の現金贈与、あるいは評価額2千万円の自宅の贈与には贈与税はかからないという特例です。
【現金贈与】
購入時に妻に2千万円を贈与して購入すれば、夫持分2/3、妻持分1/3。
【評価額の贈与】
夫が購入後に評価額2千万円分の自宅を贈与すれば、夫持分1/6、妻持分5/6。
ただし、購入直後の贈与は資金贈与と紛らわしいので、しばらく時間を置いてから贈与します。
贈与後にこのマンションを売ったとき
このマンションをさらに数年後同じ6千万円で売った場合
【現金贈与】
妻持分1/3のため2千万円が妻に。
【評価額の贈与】
妻持分5/6のため5千万円が妻に。
譲渡益が0なので課税もありません。
6千万円でなく1億円で売れた場合は、譲渡益は夫婦合わせて4千万円となりますが、居住用財産のため共有者それぞれが3千万円特別控除を受けて課税は0です。評価額の贈与の場合は、売却代金のうち妻持分5/6の8千3百万円余りの贈与となります。
息子にこのマンションを贈与する
夫単独で購入後、息子に贈与する場合。6千万円のマンションが2千4百万円の評価での贈与となり、相続時精算課税を選択すれば贈与税は0円で済みます。
さらに息子がこれを8千万円で売った場合、受贈物件の譲渡での取得原価は贈与者から引継がれるため、6千万円と8千万円の差額、2千万円の譲渡益となりますが、息子がここに居住していたなら3千万円特別控除の特例で譲渡税は0。
売却代金全額を贈与したことになります。
特例適用のための注意
売却時に3千万円特別控除の適用を受けるには、自ら居住していることが大前提ですが、土地だけの場合は適用されません。
また、贈与の際の不動産取得税は家屋がないと居住用軽減措置が使えないため税額の軽減を受けられません。そのため、贈与する際に、わずかでも家屋持分をつけるのが秘訣です。
相続税対策効果を上げるためには
最初に、マンションの販売価格は、、近隣の専有面積あたりの単価を相場として価格設定される、としましたが、マンション購入による相続税対策の効果を上げるためには、相場の高い物件、即ち、同じマンション内でも今後高く売れそうな人気の高い部屋、さらには近隣のマンションでも表通りより一歩入ったマンション(路線価は低いが静かな環境で販売価格は高い)が効果が上がりそうです。